Skip to content

書評「90日で成果を出すリーダー」

私自身、直近で異なる業界への転職を経験しました。転職先には知り合いもおらず、組織分野や力関係も分からない、ビジネスモデルも未経験で、統括する組織の規模も大きくなりました。流石に、これまでの経験、手法だけで同じように組織運営をしていたのでは、いろいろと躓くのではないかと感じ、手にしたのがまさにこの本でした。

■ポジション就任後の初動の重要性を説く

 
本書、または「マネジャーの教科書――ハーバード・ビジネス・レビュー マネジャー論文ベスト11」でも登場するBecoming Managerの著者でもあるLinda A.Hillが指摘するように、新たなポジションに就任する場合、初動での施策や意思決定の誤りが、その後の悪循環につながり、軌道修正が取れない状況に陥ることが憂慮されています。
 
自身の経験も踏まえると、例えば、前職での成功事例をそのまま取り入れようとして失敗する経験はありました。仮に、これが新たなポジションの就任直後だった場合、組織上での信頼形成に失敗することを意味し、その後の業務遂行・組織運営での協力が得られずに孤立するリスクがあるわけです。本書でも、いくつかの失敗事例を掲載していますが、総括すると、自分が置かれているビジネス環境や期待されている成果に対する状況判断を怠る、または誤るが故に、そこから導出する打ち手・施策のアンバランスさが失敗の原因ではないかと解説しています。
 
一方で、本書の軸として、90日間という時間軸を重視し、この期間で小さな成功をもとに、その後の組織の綱取りと成功拡大を主導していこうという考えを前提にしています。いわば、社長に就任して3ヶ月で経営改革、マネージャーに就任して3ヶ月でパフォーマンス改善を言っているわけで、読み手からすると、かなりの短期間に感じますよね。そんな短期間で、なんらかの成果を上げるまでの道筋としてのチェックリストを提供するのが、まさに本書の醍醐味なのです。
 

■90日間での初期成果に向けたマイルストーンを徹底解説

 
すべてを記載しないが、本書では、ざっくり言えば、以下のようなマイルストーンを敷きながら、各ステップでのチェックリスト、状況判断・施策の打ち手パターンについて、事例を交えながら、解説しています。本書の読み手の想定は、あくまで、何ら化の組織運営、事業戦略の立案・実行を担う管理職のレベル、視点でまとまっています。
 
・組織の文化、構造に関する理解、現状把握
・上司からの期待値の把握、調整
・状況に合った戦略の立案
・初期の成果
・組織構造、チームの最適化
 
一例として、組織の文化を把握するために、詳細な事業計画・業績データを入手し、確認する、部下との面談を通じて戦略の組織内浸透の現状把握を行うといった、具体的、詳細レベルでToDoが整理されています。本書を熟読するも良しですし、チェックリストの箇所を斜め読みして、理解しにくい点があれば、章の内容を読むという流れも組めたりします。
 

■転職して、感じた自身の課題は?

 
本書を手にしたのは、転職の確か1,2週間前でした。個人的に、最も役に立ったのは、状況にあった戦略の立案の箇所、いわば、過去の組織の成功・失敗をきちんと評価するプロセスでした。組織のパフォーマンスとして何が成功していて、何が失敗しているか、自分なりに解釈をしながらも短絡的に結論づけず、自身の解釈を組織に共有することで、そこに至った背景までを確認する、見解のズレの有無を確認するプロセスを踏んだりしました。これにより、的確な状況把握ができたように感じます。
 
一方で、これは企業の組織文化、人材育成(HRM)という長年の蓄積にもよるのでしょうが、期待していた業績データの収集、そして、その背景にあたるビジネスプロセスの把握には多くの時間を取られることになりました。これは、前任の管理職が、業績のデータ分析、プロセスのドキュメント化、標準化が私の期待値よりは低い状況にあったが為です。就任すると、最初の1、2週間は、社内のステークスホルダー、自分の担当する組織メンバーとの1on 1面談が続くわけですが、この時点でそのようなデータを元に話をする癖をつけることの重要性を感じました。
 

まとめ:90日間で状況把握から小さな成果まで走り切るには抜け漏れのないチェックリストが必須

 
失敗のできない就任直後。ただでさえ、新しい会社、新しい組織において、ビジネス、業務を理解することでいっぱい、いっぱいになりがちですが、90日間という短期での成功には、本書が提示するマイルストーン、チェックリストは極めて有用な情報、ツールに違いないように感じました。