PR活動の軸のプレスリリース。その中でも調査結果の発表は、斬新な製品・サービスの発表の次に記者の関心が高いカテゴリー・コンテンツとお聞きしたことがあります。先日、筆者も調査結果系のプレスカンファレンスを実施しましたが、調査データってもっと開示すべきなのかな、と感じたこと点をまとめてみました。
■キーメッセージへと激しく要約化されるピッチ
一般的にプレスカンファレンスを行う場合、発表内容のプレゼンテーションとスクリプト(ノート、メモ)が共有され、発表者との事前にランスルーを行います。ランスルーは、PR担当から発表者にこのように説明してくださいね、というピッチとノートを流しで共有する感じです。また、プレゼン以外にブリーフィングノートとして、以下の情報、プレスカンファレンスのコンテクストが共有されます。
・プレスリリース内容と目的
・プレスカンファレンスのアジェンダ
・当日の参加予定メディア記者のプロファイル
・発表内容のコンテンツに関する補足情報
・自社の会社概要、競合対策に関する基本知識
・記者から想定される質問
最近のプレゼンは脱ビジースライド、すなわち、プレゼンの多くの情報をパワーポイントに埋め込む形式の反対の形式が増えています。その為、調査結果系の発表でも、ピッチのメッセージはキーメッセージに集約されることが増えたように感じます。例えば、”全世界でのSNS利用時間の平均は1.5時間と昨年より15%上昇”といった感じでしょうか。そして、調査対象のプロファイルも全体像、例えば、日本人1000人を含む世界1万人に調査といった具合に全体化して伝えられることが多いように思います。
ですが、そのような場合、記者からは調査データに関するより詳細な質問をもらう場合があります。例えば、”日本の1000人はどのような属性ですか?”、”ネット先進国のアメリカと比較した場合の各質問項目の回答の詳細はありますか?”、”日本人の年代別での傾向はどうですか?”といった感じでしょうか。メディア側も各媒体の読者層を想定しての質問です。そして、このような質問を受けると個人的に感じてしまうのが、一次データをもっと共有できないか、ということです。
■調査の一次データの共有に関するメリット、デメリットは?
まずは、デメリット。恐らく、PR主体者側からすれば、調査の一次データをメディアに共有することについて、幾つかの課題、リスクを感じるかもしれません。
一点目、調査を外部委託している場合、一次データの共有範囲や二次利用に関する制約がある場合です。調査で売上を上げている調査会社からすれば、調査の二次利用が増えれば、それだけその分野での新たな調査依頼が減ることになるからでしょう。この様な場合、一次データを共有する、しないではなく、できないので仕方がないですね。
二点目、一次データを元に媒体が違う結論を導き出して、発表しないか、というリスクでしょうか。ですが、よほど調査データから導出したPR主体者の解釈やメッセージに歪曲がない限り、恐らくはプレスリリース上のキーメッセージは取り上げてもらい、補足的に記者が気になる点を追加してくれる流れになるはずなのでこのリスクも少ないでしょう。
次に、メリット。
一点目、記者からすれば、他の媒体とのコンテンツの差別化、もしくは自社の媒体の読者層にマッチしたコンテンツの提供という観点から、独自の視点や示唆を含めたいと考えるのではないでしょうか。仮に一次データを共有した場合、自社の媒体の読者層での回答結果を補足、または読者自身の経験も踏まえた補足をコメントするかもしれません。つまりは、記者がより良質なコンテンツを書ける為の情報提供ができれば、記事化される、または記事化されたコンテンツの魅力があがり、記事の拡散が期待できます。
二点目、プレスカンファレンスに参加できなかった記者にもプレゼンピッチ+一次データで包括的な情報提供が可能となり、記事化の率が向上できるかもしれません。
以上のようなメリット、デメリットを考慮すると、個人的には開示できる一次データは共有することが望ましいように考えます。
■究極は調査の一次データをウェブ公開
昨今のフェイクニュース含め、一次情報、一次データの確かさはメディアでは重要な要素となりつつあるように感じます。このような背景から、最終的に記事を消費する読み手側まで調査結果データを共有してしまうというケースもあります。その一例として、あるBIベンダーがアジア圏における生活コストを調査し、その分析アプリをウェブで公開しています。
一次データをウェブで共有し、更には各読者の関心、切り口ごとに調査結果を行えるアプローチをデータ・ジャーナリズムとも言うようです。
”Qlik、ブラウザ上でアジア太平洋地域8都市の生活費を比較できる、新たなビジュアル分析アプリを無料公開、分析結果を発表”
■まとめ 調査結果系プレスでは一次データの共有を考えてみよう
調査結果系のプレスカンファレンスを実施する際には、一次データの開示・提供を少し考えてみても良いかもしれません。実際に一次データを開示した場合とそうでない場合で、カバレージ、記事の質が変化するのか、見てみるのもよいのかもしれません。
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