ウェブ関連のマーケティング書籍は種類も多いです。しかし、B2Cの手法をそのままB2Bに応用できない場合もあります。且つ、現実にはB2B特化のウェブマーケティング書籍はかなり限定されます。昨今のMAブームで、世の中の風潮として、B2B でも購入製品・サービスに関するウェブでの情報収集の比重が高まっていると繰り返し説明されています。今一度、昨今のB2Bにおけるウェブマーケティングの手法を整理するため、本書を手にとってみたので、早速、紹介しましょう。
⬛マーケからではなく、営業課題から入るアプローチを推奨
まず、本書の前半では、営業課題を元にウェブマーケティングの施策を検討すべきというアプローチを強調しています。ウェブマーケティングでは、その時々で注目されている手法から話にはいる場合がありあすが、本書ではそもそも、次のような問いかけを行いながら、ウェブマーケティングで何をすべきかを考えるべきとしています。すなわち、戦術からではなく、戦略策定から入る、これを営業とマーケでの全体最適、補完、MECEで考えるアプローチです。
- 現状の営業課題として、何が挙げられるか?
- リード獲得前、ナーチャリング、既存顧客のリテンションといった各段階での営業課題は何か?
- ウェブマーケティングが営業プロセス全体のどの部分をサポートすべきか?
- その課題に則して、どのようなターゲット企業のどのような購入検討をどのようなコンテンツサポートすべきか。
後半では、マーケティング施策のフレームワークとして、ウェブサイトへの集客→コンテンツによるコンバージョン→営業・商談活動(案件対応)→ナーチャリング・リテンションに則した現状分析を行うことを推奨しています。こちらは、すなわち、ウェブマーケティングの戦術策定です。さらに、各フレームワークのパート毎に、例えば、コンテンツ施策の棚卸しと作成ステップ、リードコンバージョンにつながるCTAのタイプ整理といったハウツー、および、ウェブマーケティングとしてのKGI・KPI設定にも触れています。
本書では必ずしも、すべてをデジタルにウェブに置き換えという前提ではなく、B2B、顧客対面の営業がいる前提で、全体の中でどこをデジタライズすべきかという前提に立っています。
⬛俯瞰的にB2Bウェブマーケティングの戦略・戦術レビューに使える1冊
ここからは個人的な感想、考えについてです。
まず、B2Bマーケの組織の場合、ウェブチーム、デジタルマーケティング、フィールドマーケティングといった役割のサイロ化が進んでいる場合があります。一方で、MAの導入により、ウェブチーム以外がよりデジタルなキャンペーン施策を回せるようになっていて、部分、部分でいれこだったりと。で、ウェブはウェブチームが引き続き管理しているとか。換言すると、フィールドマーケはプッシュ型キャンペーンはやるが、プル型はやらないという感じです。つまり、ウェブマーケティング全体をどのような組織体制を対応するかの整理が現場で必要だったりします。あくまで、個人的な体験からですが。この点において、本書が提示するような全体フレームをいずれかのチームの誰かががまとめていくこと乗り越えられるように感じます。このフレームワークはそのまま使えそうです。
次に、同じ業界・会社に勤めているとややマーケティング施策の打ち手も固定的になります。本社では、集客施策、コンテンツのタイプ、キャンペーンのCTA(問い合わせ喚起とそれによるオファーリング)の幅出しがそれなりにされているように感じます。自社の現状整理をこれまでの自社の経験・考えだけで行ってしまうと、結構、打ち手の漏れが発生する場合があります。例えば、営業は問い合わせを受けると評価機を貸出・検証支援を行う手厚い案件対応ができるにも関わらず、そのようなオファーリングを過去の経緯から掲載していない、といったケースでしょうか。打ち手のテンプレートは圧倒的に戦術の策定、プランニングを高速化するには有益でしょう。
⬛まとめ B2Bデマンド・ジェネレーション関連のウェブマーケティング入門書として最適
営業案件を創出するため、ウェブマーケティングの戦略策定、概要設計を理解するためには最適な入門書でしょう。
一方で、コンテンツマーケティング、マーケティングオートメーション、ウェブ解析といったB2Bにおけるウェブマーケティングのより具体的な手法までは落とし込まれていないので、このレベルまでを期待される方には物足りないでしょう。