B2Bマーケター界隈の会話で姿を現す現場の課題の1つとして、施策のサイロ化、分断といった点が挙げられます。
こういった症状の根本原因の1つとして、施策、キャンペーン、プログラムという概念、考え方の粒度が整備、言語化、共通化されておらず、目的を軸にした求心を失っている場合があるように感じることがあります。
例えば、自社の中で、次のような問いを行った場合、マーケティング関係者でびったり同じ回答が出てこない場合、これに当てはまるのでしょう。
・キャンペーンとは何か?
・キャンペーンの範囲は何であり、評価はどうすべきか?
・キャンペーンと施策の違いは何か?
・キャンペーンはどのような期間を前提に考えるべきか?
・キャンペーンは誰が取りまとめているのか?
一方で、欧米のマーケターとの会話からは、この辺りの捉え方、概念への理解は共通化されているように感じます。そして、この前提と元にキャンペーンのプレイブックを通じて、キャンペーンの設計・実行書なるものへと表出していきます。そこで、この概念を整理していきましょう。
個人的な感覚と近い(これが正解かは別として)、施策、キャンペーン、プログラムの概念は次の通りです。本当は、参照できるウェブサイトのリンクなりを掲載したかったのですが、再度見つけられないので、記憶も辿り、ラフに書いています。
●Program
特定の市場機会に対して、1年程度のビジネス周期を通じて、Campaignの集合体をベースとして取り組みを指す。具体的には、STPをベースに、ターゲットしたセグメントへのある製品・サービスのポジショニングに関して、マーケティング部門のプロモーションで対応するBuying Funnelに応じた活動を通じて、成果指標を持っていく。
例えば、ある製品・サービスに関して、業種セグメントで注力をする、そして、そのターゲットセグメントにおけるリード獲得、そして、パイプライン創出までをスコープする場合、Program期間全体に応じた、獲得リード数や創出パイプライン金額の設定を行う。そして、1年などの長期である場合、複数のCampaignを組み合わせる為、ゴール達成に向けたCampaignの全体構造、タイミングを考え、実行する。
ゴールに対しては、キャンペーンミックス(どのようなキャンペーンカテゴリーの配合で定量的なゴールをリーチするか)として、ファーストパレートとしてインバウンドとアウトバウンドのミックス、さらにはセカンドパレートとしては各バウンド配下のキャンペーンのミックスを考えていくことになる。
そもそものSTPとして、業種、地域、企業規模、特定の顧客プロファイル(例えば、自社が置き換えを狙う競合企業の既存ユーザ)といった切口を元に、市場規模(市場規模は魅力的か)と可能性(自社で勝てるか)があるわけだが、注力するセグメントに関して、営業部門と連動して選定すべきである。
STPを明確に定義することで、個々のCampaignはこれに連動することで、Campaignの分散、ブレの発生を抑えて、戦略的にゴールに向かわせることなる。
●Campaign
Programゴールを構成するCampaignは、単体として見ると、Programで注力するBuying FunnelとBuying Groupに対して、ファネルに応じたコンテンツ、エンゲージメントを提供し、購買プロセスを駆動していく為の最小単位の活動を指すことになる。
例えば、特定業種向け販推のProgramである場合、当該業種にリーチし、CTAを通じたコンバージョン(ターゲットしたファネルから次のファネルへの移行)を狙っていくわけだが、Campaign単位として、業種向けの展示会に出展するとか、当該業種向けのウェビナーを実施する、採用事例を元にしたプレスリリースの配信、といった1つ1つの活動単位をCampaignと捉える。
Campaignの企画について、Program全体の成果ならびに実行する中でのGAPを意識することで、リソース配分と実行が最適化されていくことが重要である。Programのゴールに対して、Demand Waterfallをベースに活動量の進捗とギャップを捉え、キャップのあるファンネルへの動的な対応を考え、実行することなる。
繰り返しになるが、これによるCampaign単体での評価に埋もれず、全体ゴールへの貢献に向けたCapmpaignの有機的な連携が生まれてくる。
●Tactics
TacticsはCampaignを実現する為のターゲットオーディエンスとの1つ1つのインタラクション、対話の単位でのマーケティングアクションと捉えると良いのではないか。
例えば、特定業種向けのカンファレンスを開催するとして、このCampaignをスケールアウトするためには、マーケティングアクションとして、次のようなことが考えらえる。集客における、インハウスのデータベースによる集客、外部メディアによるメール配信、自社ウェブにおける告知露出の設定、SEMによる集客拡散など。また、コンテンツマーケティング的に、あるファンネル向けのコンテンツについて、自社メディア、パートナーマーケティング、外部メディアを通じた拡散していく場合も、1つ1つのマーケティングアクションになっていくわけだ。
このようなTacticsは、マーケティングが機能別組織となっている場合、担当者が分かれていくこと成る為、アクションのオーケストラーションが必要になってくる。具体的には、CampaignのPlaybookを用意し、個々のTacticsに対する役割をRACI的に整理していくことなる。
TacticsとCampaignの間にある溝(GAP)
Program、Campaign、Tacticsという順序で、マーケティングアクションを落とし込んでいく、且つ、走りながらProgramのギャップを元にCampaignを修正していき、Tacticsを引き直ししていくと考えれば、その通りという話なのですが、そうならないのであれば、その要因の多くはこの順序を持って関係者で計画をしていないからでしょう。
このようなProgram、Campaign計画をリードし、マネージする、Campaign Manager的な役割を果たす担い手が不足しているのが、特に日本のB2Bマーケティング分野での問題なのでしょうし、その為、施策担当者がボトムアップで、もしくは、自身のサイロで対応できる施策を積みあげて行っているのかもしません。
サイロ化の根本、恒久的な対策として、既にお読み頂いている内容からお察しくださいなのですが、短期的に、対処療法的にアプローチとして、現状の施策について、上記のフレームでマッピングするのも良いかもしれません。
