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B2Bマーケ/デマンドジェネレーションに営業経験は必要か?論への考え

Twitter界隈で時折見るコメントとして、B2Bマーケは営業経験が必要論。個人的な立場からすれば、私自身は法人営業を経験後に、B2Bマーケターへジョブチェンジした身なので、この必要論は立場上は都合がいいのですが、一方で、これは理想論に感じる部分もあり、今回は個人的な考えをまとめてみました。
 

■まず、B2Bマーケは営業経験必要とする考えの根拠を整理

 
営業経験があること、すなわち、市場、顧客、競合に関する理解があるという前提でしょう。
 
B2Bの場合、B2Cと異なり、製品・サービスの機能、ベネフィット、購入プロセスを理解するのに、その分野の深い知識が求められる場合があります。B2Cであれば、営業、マーケター自身が買い手となりえるので、B2Bと比較して、製品や購入プロセスは理解、推測しやすいでしょう。一方で、B2Bの場合、例えば、何らかの製造装置の場合、顧客の製造プロセスの全体像、製造装置が関連する工程において、加工対象の素材、加工方法、さらに言えば、装置の購買プロセスといったナレッジは、少し本を読んだり、ネットを見るだけでは補完できないわけです。そして、これらの知識は、営業活動や営業教育を通じて、取得されることは間違いないでしょう。
 
一方で、営業経験者がB2Bマーケターというのは、理想論と感じる根拠は次のとおりです。
 
●キャリアパス上でのメリットは確立されているのか?
 
例えば、一定の営業経験を積ませた上でB2Bマーケターにジョブチェンさせるという育成とする場合、営業と同様の給与、将来的なキャリアパスが確立されているのか?仮に、製品知識、顧客理解に3年程度の営業経験が必要として、3年程度の営業経験の後にマーケに転属した場合に、では、4年・5年目の営業と同じような給与レベルを保証していっているのでしょうか?
 
外資系に長年勤めた肌感覚として、営業とマーケターが同じ経験年数の場合、営業の方がコミッションも含めた給与総額は高く(その分、営業ノルマという仕事の重みがあるわけですが)、B2Bマーケ担当で同等の給与を設定されることはないです。比較的、若手でフィールドセールスになっていない場合、インサイドからマーケでは給与格差が少ないから、ジョブチェンジもあるのでしょうが、逆に言えば、フィールド営業と同等の営業経験、知識がない段階の異動なので、営業経験必要論で言われるレベルの営業経験ではないのかな、という印象です。
 
●営業とマーケティングでは守備範囲とスキルセットが異なるのではないか?
 
B2Bマーケター、ここでは、製品・サービスのプロモーション担当と仮定します。マーケターは、検討初期の見込み客に対して、プロモーションという仕組みを通じてコミュニケーションを取ります。一方で、営業は検討段階が進んで顧客に対して、1 on 1で商談のハンドリングを行っています。
 
検討初期の見込み客に対しては、顧客が取り組まければならない理由を認識させ(潜在ニーズを顕在化)、自社の製品・サービスのカテゴリーやポジションニングを理解させ(顧客ニーズと自社製品のマッチング)、検討を進めていただくのですが、これらのメッセージは、未使用ユーザにも理解されやすい、平易でありながら、キャッチー、いわば、マーケティングセンスが求められます。また、これらのコミュニケーションをデジタル施策含めたスケールアウトする手法で実現するには、一定のマーケティング知識・経験が必要であれば、営業経験があれば実行できるわけでもないです。
 
つまり、営業トークとマーケティング・コミュニケーションはトーンも手法も異なりますし、守備範囲が違うわけなので、営業経験が役に立つのかもしれないが、それよりもマーケターとしての経験が相当に必要に感じます。このスキルセットの相違を考えると、営業を経由することの追加的なメリットは、後述のマーケと営業連携の施策を考慮したなら、あまりないように考えます。営業経験できたから、すぐにマーケができるわけではないですよね?
 

■営業未経験のB2Bマーケターでも、市場、顧客理解を仕組みでカバー

 
営業経験を経由せずに、B2Bマーケターとして、複雑なB2B商材を扱う場合に、B2Bマーケターの理解を補完する仕組みとして、次のようなことが考えられます。大局では、Go To Market Planで市場全体の理解、そして、カスタマージャーニーで顧客理解について、マーケティング、営業での共通理解を組んでいくわけです。Go To Market Planにしても、カスタマージャーニーにしても、プロダクトマーケティングが整備する場合もありますが、いない場合は、営業とプロモーション担当マーケで整備をしていくのが現実解でしょう。
 
●Go To Market Plan の整備
 
Go To Market Planとは、端的に言えば、自社の商品・サービスをどのような顧客層(セグメントされたターゲット企業群)にどのような価値提案で開拓していくか、そして、それをどのようなマーケ、営業機能でカバーしていくか、を定義した販売戦略です。YouTube等で検索すれば、そのエッセンスは確認できるかと思いますが、おおよそは、これらの要素を定義します。
 
1.市場機会の定量評価と目標設定:
・市場規模を見積りつつ、自社の売上高、シェア等の売上目標を設定する。
 
2.市場機会の根拠となるターゲットセグメントと製品のValuePropostion策定:
・市場のセグメンテーション、および、ターゲティング、自社商材のValue Proposition(価値提案)と連動して整理する。現実的には、1と2を行き来する感じでしょうか。
 
3.Sales Channel の戦略策定、Readinessの実施:
・販売チャネルの短期、中期的なReadinessに向けたRecruiting、Enablementの施策を策定する。
・短期は自社の営業の採用、育成であったり、その営業の最初のアクション(アプローチする顧客リストの準備)を定義する。
・パートナーがリクルーティング済みであれば、自社営業の教育をどうようにパートナー営業、SEに展開する。中期は、時間のかかるパートナーのリクルーティング(ターゲットとなるパートナーの選定とリクルーティング活動)を整理する。
・これら営業の活動と連動するようにマーケティングのプロモーション、リード獲得施策を計画する。
 
●カスタマージャーニーとリード管理プロセスの整備
 
Go To Market Planで、ターゲットセグメントと価値提案、そして、営業チャネルの整備ができたら、具体的な販売に向けたマーケティングと営業活動のプロセスを整備します。顧客の購買検討プロセスに即して、マーケティング、営業が対応すべきプロセスの共通理解を整備します。顧客の検討段階の各プロセスにおけるメッセージングは、自社製品・サービスのValueProposition(価値提案)と一貫性を持つ必要があります。
 
万が一、B2Bマーケターが対応する、検討初期段階でのコミュニケーションが価値提案とずれていると、それらのリードをフォローする営業の不満が高まるわけですし、同時にどの検討段階の顧客を引き渡すのか、リード管理の共通理解も重要です。
 
●営業課題の理解に向けたミーティング実施
 
リード管理プロセスが確立されてくると、営業部門とマーケティング部門でのDemandGenerationを軸にした進捗会議を行うケースがでてきます。単に、リード管理上の定量的なレビューに限らず、定性的な情報として、市場、競合の変化による営業の課題を確認することが大事です。例えば、競合が販売チャネルを拡大してあるインダストリーへの新興を深めているとか、競合製品がこんな値引き対応を展開している、などの営業が収集できる情報を元に、短期的な施策(マーケティング、営業アプローチの変更)、長期的な施策(市場セグメントの再選定など)を共同で考えていくことで、営業、マーケでのAgilityを高めていきます。
 
あと、個人的におすすめなのは、このようなリード対策会議の設置とは別に、営業部門での四半期等でのビジネスレビューに参加し、各営業レベルでの課題を生の声として聞くことです。これにより、営業の課題の具体的なイメージが補完できるからです。子役の苦しみが理解できるのも大事ですが、その苦しみに対応する営業の苦しみが理解できてこそ、本来はマーケターですよね。
 
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